エピソード

episode13-1 千葉ちゃん、道産子パワーに圧倒される!

五月の末日。北海道から母・清子の親友ふたりがやって来た。
T子ちゃんとJ子さんである。
T子ちゃんは大柄で大声のいわゆるオバちゃん。口癖は「だからさ~」。必ず台詞の頭に「だからさ~」を付ける。
J子さんは痩せていて上品な雰囲気の淑女。口癖は「ノンノンノン」。フランス人か!とついつい突っ込みを入れたくなる。

ふたりとも生まれも育ちも札幌の正真正銘の道産子である。
お互い、清子との会話の中にその名前を聞いたことはあるらしいが、顔を合せるのは今回が初めてである。
T子ちゃんと清子は二十八年来の付合い。千葉ちゃんが幼稚園に入る前から互いの家に遊びに行き、千葉ちゃんと同い年の息子にいじめられたりしていた。
J子さんと清子は十七年来の付合い。千葉ちゃんが中学生の頃から家に遊びに行き、当時高校生のひとり息子の部屋でジュディマリのCDを聞いたり、漫画ボーイズビーや東京大学物語を読んだりしていた。

そんなT子さんとJ子さんがほぼ同じ時期にやって来て、清子の部屋に寝泊まりするというから大変だ。
基本的に千葉ちゃんはひとりが好きなので、ひとつ屋根の下(しかも2DK)に三人もの人がいるというのが落着かない。しかもそのふたりは千葉ちゃんの友達ではない。清子の友達なのだ。気を使うではないか。
自室でDVDを観ていても、携帯をいじっていても、煙草を吸っていても、ふたりの会話が聞こえてくる。何だか気が気じゃない。
しかもT子ちゃんとJ子さんは全く違うタイプ、殆ど正反対のタイプなのである。ふたりの共通点は『清子』と『道産子』だけと言っても過言ではない。
そんなふたりが上手くやっていけるのかを考えると、それはもうソワソワ、ウロウロしてしまうのである。

更に困ったことに、何故かふたりとも、申し合わせたかの様に『片道切符』で来ていた。
「みーちゃん、しばらくいるからね」
そのしばらくとはいつまでなのか。いつまで千葉ちゃんはオロオロしなければいけないのか。でも聞けない。「いつまでいるの?」なんて聞けない。
わざわざ海を渡って東京まで来ているのに、「早く帰れ」なんて思っているのがバレたら困るから……。

 

 

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