エピソード

episode14-1 千葉ちゃん、沖縄に帰る!(前編)

何を隠そう沖縄は千葉ちゃんの第二の故郷である。
母・清子が生まれ育ったのは沖縄県那覇市。高校卒業後に上京し、北海道出身の父と結婚して、北海道に移住したのである。千葉ちゃんは小学生の頃から、航空会社のちびっこひとり旅で何度も沖縄を訪れている。まさに北から南へ日本縦断ひとり旅。千葉ちゃんは小さな頃からひとり旅が好きだったらしい。

さて去る六月十五日。
千葉ちゃんはANA129便でひとり沖縄に向かった。
約七年ぶりの沖縄である。
今回は遊びではなく親戚一同集まる行事があった。二泊三日の短い滞在なので、出来ることも限られているけれど、せっかく行くんだから余すところなく沖縄を楽しみたい。いざ沖縄に出陣である。

 

滞在一日目。

東京から約二時間半の空の旅であった。大好きなニューヨークへ行くのには十三時間かかるので、二時間半なんて『あっという間』で呆気ないほどである。
離陸して気流が安定したらパソコンを立ち上げて、サービスのコーヒーを飲んで、原稿を書いて、トイレへ行って、パソコンをシャットダウンしたらもう着陸である。
密かに楽しみにしていた機内食すらなかった。ニューヨーク便は機内食が三回も出るので、沖縄便も一回位『スパムサンドウィッチ』的な軽食が出るだろうと踏んでいたのに、とんだ誤算であった。

お腹を空かせて那覇空港に到着した千葉ちゃんは、迎えに来てくれていた叔母・とし子と再会を果たした。とし子は母・清子の姉であり、確かもうすぐ七十歳になるハズである。小学校の頃に会った時には千葉ちゃんよりも背が高かったのに、いまや千葉ちゃんの方が大きいので、とし子は千葉ちゃんを見上げて話す。時間の流れを実感する。
その日の沖縄の天気予報は曇りだった。まだ梅雨明けはしていなかったが、ここ数日、雨は小休止だそうだ。

ところがどうしたことか、千葉ちゃんととし子が空港から出てモノレールに乗ろうとした途端に、激しいスコールがやって来た。傘なんて役に立たないほどの大粒の雨が横殴りである。モノレールに乗っている時なんて、まるでガソリンスタンドの洗車コーナーに入ったみたいだった。
とし子も驚いて「あきさみよ~。なんね、この雨。みーちゃんが着いた途端にね?」とバリバリの沖縄弁を発していた。
千葉ちゃんととし子は、モノレールの美栄橋駅で降り、鉄砲雨の下、大荷物を抱えてとし子の家に向かった。
とし子の家に着いた時には、千葉ちゃんもとし子もべちょ濡れだった。とし子の旦那・文成おじさんからタオルを貰い、新鮮シークワァーサージュースで空腹の胃を満たした。

本来なら、そこで近況報告のひとつでもすべきだろう。
何せ七年ぶりの再会なんだから。
しかし、その時、千葉ちゃんは非常に焦っていた。
なぜなら深夜ドラマのプロデューサーに「沖縄行く前に原稿送って下さい」と言われていたにも関わらず、まだ送っていなかったからだ。
丁度その日の十九時から打合せがあるらしいので、それに間に合うよう、千葉ちゃんは一刻も早くメールを送らなければならなかった。
しかしとし子の家にはインターネットの環境があるはずもなく、千葉ちゃんは懐かしさを噛みしめる暇もないまま、宿泊する『ステーションホテル牧志』へ大慌てで向かった。

ホテルの部屋へ着くや否や千葉ちゃんはパソコンを立ち上げ、LANケーブルに繋いだ。そして飛行機の中で書いた原稿を添付しメールを送った。
ほっと一息である。ひとつ仕事が完了した。
旅先で仕事をするのは好きではないが、それもこれも千葉ちゃんが昨晩サボったのが原因なので自業自得である。
一安心した千葉ちゃんは、ついでにメールチェックをして、続いて部屋の備品チェックをして、ようやく濡れた服を着替えた。

 

 

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