episode16-1 29歳、最後の舞台
つい先日梅雨入りしたかと思ったのに、あっという間に梅雨明けし、駆け足で夏がやって来た。
北海道出身の千葉ちゃんは梅雨が嫌いである。
いや、梅雨が好きな人なんて殆どいないだろう。
あの鬱陶しく降り続く雨は千葉ちゃん達の心を沈ませ、頭を爆発させる。心はじめじめ鬱々しているのに、頭は湿気でボンバーなんて何だか納得がいかない。
千葉ちゃんは何を隠そう、天然パーマなので、雨の日は外に出たくない。
どんなに時間をかけて前髪をセットしても、駅に着く頃にはうねっている。そんなんじゃ満足にデートも出来ない。前髪が気になって、会話に集中出来ないからである。そう、雨の季節はデートが出来ない。困ったものだ。
でもまあ、二十九歳の千葉ちゃんにはデートする相手がいないので、うねっていようが、キマッていようがどうでもいいんだけど。
とにかく、『梅雨』という言葉は、『納税』や『締切』と同じくらいうっとおしい。
さて、梅雨と言って想い出すことと言えば、八月四日から始まる千葉ちゃん脚本の舞台『恋ばば十四歳!』である。
梅雨というキーワードが深く関わる作品なのである。
千葉ちゃんは四月末にこの舞台脚本の仕事を貰い、その後プロットを書き重ね、脚本を直しまくり、先日やっと改訂稿があがったのである。
四月末発注、七月頭納品というのは決して十分過ぎる期間があるとはいえない。むしろ、かなりタイトなスケジュールに想う。
大抵、原稿をあげた日の次の日の夜に打合せがあり、直し箇所や方向性を確認し、一週間で直し、また次の日の夜に打合せ……そんなことの連続であった。
しかもその期間、舞台脚本だけではなく、WOWOWの深夜ドラマの脚本協力やちょこちょこと原稿の仕事もあったので、はっきり言って千葉ちゃんはいっぱいいっぱいだった。猫の手も借りたい程だったので、ビーナイスのS社長に、「千葉ちゃんがふたりいればいいのに」と呟いたら、「それはちょっと嫌です」と言われた。失礼な話である。
