episode2-1
29歳のクリスマスイヴ
秋生まれの千葉ちゃんは、秋から初冬にかけての時期が一年の中で一番好きである。
夏が終わり、無性に人恋しくなり、意味もなくセンチメンタルになり、イルミネーションの中をひとりで歩きながら、「千葉ちゃんを理解してくれる人なんてどこにもいないのね……」などと、孤独に浸るのが好きなのである。
いや、そうやって浸っている自分が大好きなのである。
要するに千葉ちゃんはナルシストなのである。
そして一年の中で一番好きな行事。それはクリスマスイヴ。
クリスマスではない。クリスマスイヴだ。
素敵な恋人と味わう、ロマンチックな時間と甘い言葉たち。それが千葉ちゃんが持つ、クリスマスイヴのイメージだ。
なにせ、トレンディドラマを見て育った千葉ちゃんだ。
大人のクリスマスイヴはブラウン管の中の世界そのものなのだ。まさにサイレントイヴなのだ。
しかし、いまだかつてそんなドラマの様なクリスマスイヴを過ごしたことなどない。
そして二十九歳のクリスマスイヴは……ひとりぽっち。
十月にカレがいた頃は、そのカレと過ごすんだと疑いもしなかった。
あっけない終わりを迎えた一か月の恋(短っ)は、通夜をして葬式をして火葬して、記憶の墓場に埋葬した。もう四十九日だって終わったんだ。
次の恋なのだ。頭では分かっているのだ。
でも次の恋をする前に、試練の『ひとりぽっちのクリスマスイヴ』がやって来てしまった。
