episode2-2
29歳のクリスマスイヴ
千葉ちゃん二十九歳のクリスマスイヴは平日だった。
フリーランスの千葉ちゃんに平日も土日祝日も関係ない。
暦などあってないようなものだ。
その日、朝七時に目覚めてしまった千葉ちゃんは、声を出して自分を罵った。
眠ることが大好きで何十時間だって眠り続けられる強い体を持っているのに、どうして今日に限って早朝に目覚めてしまうのか。
今日という日が終わるまであと十七時間もあるじゃないか!
怒りが沸き起こった後には、頭が冴えてしまい眠れない。
しょうがないから起きることにした。
でもすることなどない。
予定がない。
お金がない。
特にしたいこともない。
けれど締切はあった。正確に言うと二日前が締切だった。『トラ』がテーマの短編小説を今日中には完成させたかった。
けれど今日はクリスマスイヴ。
来年の干支である『トラ』についてアレコレ考えたくないじゃないか。後回しにする。
何をしようか散々考えたあげく、千葉ちゃんは散歩に出かけた。
といっても、遠くまで行くのは億劫なので、地元の駅周辺。
千葉ちゃんは地元の駅が大好きだ。
商店街が充実しており、駅前に大きな広場があるし、図書館や雑貨屋、なんてったって大戸屋だってある。それに昼間っから地元の駅でデートするカップルなどいないだろう。いるのは主婦と子供と老人だけ。駅の近くにあるVカフェなんて、昼間はまるで老人ホームみたいなのだ。
千葉ちゃんは自分が世田谷区のこの住宅街に住んでいることに感謝を述べた。
「サンクス、ジーザス。アーメン❤」
