episode22-1 29歳の栃乙女
九月某日。
千葉ちゃんが上野発の早朝列車降りると、そこは茨城県の友部(ともべ)駅であった。
友部――。
縁もゆかりもない土地である。まさか千葉ちゃんが友部の地を踏むなんて、一年前、いや一か月前だって、想像していなかった。何しろ友部という地名を知ったのは、つい数日前なのだから。
千葉ちゃんはこの日、千葉ちゃんの母・清子の従弟、つまり大きくまとめれば親戚である、金城さんの家に遊びに行くために、朝九時半発の『フレッシュひたち勝田行き』に飛び乗った。金城さんの家は栃木県の山中、ちょうど栃木と茨城の県境にある。
事前のメールで金城さんは気を使ってくれた。
『栃木で何がしたい? 宴会、ゴルフ、観光、希望があればシタタマリマス』
千葉ちゃんはそのメールを受取り、唸ってしまった。
栃木で何をするか……。
全く想像がつかない。千葉ちゃんは栃木について無知であった。
栃木と言えば日光。日光と言えば日光江戸村。
しかし約三十も歳の離れた親戚夫妻と三人、日光江戸村で忍者を見て楽しいのだろうか。かなりシュールな絵である。千葉ちゃんは他に妙案(みょうあん)がないかと、栃木について思いを巡らせたが、U字工事の派手な背広姿しか想い浮かばなかった。
それはそうと……金城さんのくれたメールの、『シタタマリマス』とは一体…何なんだろう…?
どうやらニアミスはウチの血筋らしい。
