episode24-1 29歳、お引越し準備 後編
お引越しの準備もそろそろ佳境である。
きたる十月十五日に引越す千葉ちゃんは、家にある荷物を毎日整理している。ゴミの日のノルマは二袋と決め、必ず二袋以上はゴミを出すことにした。
今日なんて、燃えるゴミを八袋捨てた。
家とゴミステーションを三往復である。それでもまだ家にはモノが溢れ、本当に後十日ほどで引越せるか少々不安である。
さて今回の引越しで千葉ちゃんが避けては通れないのが、千葉ちゃんが世界一嫌いな生物・頭文字Gとの対決である。
頭文字Gは主にキッチンに現れたりする。
千葉ちゃんのアパートは築浅であるが、一階がワンフロア、二階がワンフロアで、引越して来た当初に下に住んでいた住人が、ゴミ屋敷同然に汚していたので、頭文字Gが大量発生、排水溝を上って来たのか知らないが、気が付けば部屋中を闊歩するという状態だった。
千葉ちゃんは一時期、本当にノイローゼになりかけた程である。
北海道で育った千葉ちゃんは二十歳を過ぎるまで、頭文字Gを見たことがなかった。ヤツがいない世界で純真無垢に育った千葉ちゃんは、産まれて初めて見たおぞましい姿と予測不可能な動きに、世田谷区全体に響き渡る程の悲鳴を上げた。
一方千葉ちゃんの母・清子はヤツを何とも思わないらしく、「あんたバカじゃないの?」と呆れ返り、淡々と殺害を繰り返した。清子は何てったって沖縄出身である。沖縄のヤツはとんでもなく大きいらしいので、東京のソレを殺害するのなんて何てことないことだったのであろう。
やがて下の住人は引越して行った。
その後も、ゴミ屋敷の名残で、春を過ぎるとヤツ等は姿を見せたが、清子が部屋中に撒き散らしたスプレーのお陰で、徐々に数は減っていった。
最近では、ビーナイスS社長のお勧め、ほう酸団子のお陰で、ほぼ姿を見なくて済むようになった。
しかし今回、千葉ちゃんは引越す。
ということは約五年間置きっぱなしになっていた家具を動かすということ。
そこに千葉ちゃんの宿敵Gの死骸があるのは間違いないだろう。
そしてそれを処理するのは、避けては通れない道なのである。
