episode25-1 29歳、最後の恋
『二十九歳、最後の恋』なんてタイトルを書くと、「二十九歳の千葉ちゃんはきっとフランス映画さながらの大恋愛をしたのね、ふふふ❤」と想像するかもしれないが、大きな間違いである。
二十九歳が終わるというのに、今年は彼氏が出来なかった、という話である。
確か昨年の終わりに読んだ、ananの占いページに、『蠍座、十二年に一度のモテ期到来!』と書かれていたハズ。
昨年末、予想外の失恋でズタボロだった千葉ちゃんを救ったのはその記事だったというのに、今年モテた記憶が一切ないのはどういうことだろう。
ananにクレームをつけたい気分である。
クレームをつければ、モテ期をもう一年延長してくれるだろうか。
だとしたら千葉ちゃんはダッシュでマガジンハウスに乗り込むのに。
しかしながら。
「きっとバチが当ったんだよ」と言われれば、返す言葉が見つからない。
千葉ちゃんは前々カレにヒドイことを沢山したので、そのバチがフランスから飛んで来たのかもしれない。
前々カレはフランス国籍で、何とか市という、パリ郊外の小さな市の市長の息子。千葉ちゃんよりひとつ年下であった。
なぜ千葉ちゃんを好いてくれたかは謎だが、とにかく尽くしてくれた。
ある時は、千葉ちゃんの仕事を応援し、千葉ちゃんの愚痴を聞き、千葉ちゃんの為にフランス料理を作り、千葉ちゃんの服を洗濯してくれた。
またある時は、千葉ちゃんの為にカラオケでエルビス・コステロの『SHE』を唄い、千葉ちゃんが大好きなフランス産のサラミを何本もくれた。
別れた後も航空便で誕生日プレゼントが届いた。
シャネルの五番である。
メッセージカードには『これをつけると千葉ちゃんが探している本当の愛が見つかるよ』と書かれていた。
千葉ちゃんは本当の愛を探した経験なんてないが、ここぞという時にはシャネルの五番をつけるコトにした。
もうそろそろ空になるのだが、まだ何も見つかっていないのは、どういうことだろう。
前々カレにクレームをつけたい気分である。
クレームをつければ、もうひとつ送ってくれるだろうか。
だとしたら千葉ちゃんはすぐさまメールを送るのに。
