エピソード

episode4-1
29歳の三箇日

それにしても困った。なんてったって二十九歳の元旦である。
なぜ困っているかと言うと、千葉ちゃんは、元旦は一日中寝て過ごしたのである。文字通りの寝正月である。つまり書くことがないのである。
千葉ちゃんの元旦の日記は、たった一文で終わっている。
ドント ストップ スリーピング。
なぜ英語なのかは分からない。英語にすると怠惰な自分が少し格好よく見えるからかもしれない。
元旦は特筆すべきことがないので、一月二日に進むことにする。
 
一月二日は初詣に行った。おみくじ『凶』のリベンジである。しかし向かったのは憎き高尾山ではなく、新宿の花園神社である。高尾山はひとりで行くには遠すぎる。
千葉ちゃんはひとりで花園神社へ行き、ひとりで参拝の長蛇の列に並んだ。周りの人たちは楽しそうに『魔娑斗の引退試合』の話をしている。千葉ちゃんはK1が大好きなので、その話の輪に加わりたかったが、知らない人に話しかけることも出来ず、ひとり携帯をいじって時間を潰した。そしてひとり参拝をして、ひとりおみくじを引いた。花園神社のおみくじは箱に手を突っ込んで紙を選ぶタイプだ。千葉ちゃんが得意としているタイプである。そして、花園神社は千葉ちゃんに優しかった。

なんと、大吉である。
念願の大吉である。「やったぁ!」ついつい千葉ちゃんは独り言を叫んだ。
しかし大吉の文字を見て喜んだ千葉ちゃんは、その一分後には閉口する羽目になる。なぜなら内容が決して大吉ではないのだ。

 

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