エピソード

episode6-1
29歳のひとりづくし

千葉ちゃんはひとりで何処へでも行ってしまう。
ひとりで行動することに抵抗などない。それは千葉ちゃんがひとりっ子で小さな頃からひとりで遊んでいたからかもしれない。

そして二月某日、千葉ちゃんがひとりで向かった先は、カラオケボックスである。
その日は、友達四人で牡蠣を食べた。どうでもいいが、千葉ちゃんは生牡蠣が大好きである。胃をたくさんの牡蠣で満たした千葉ちゃん達ご一行様は、誰ともなくカラオケに足を向けた。

気持ち的には朝までのナイトパックだったが、体的には一時間半のショートコースだった。その日は平日だったので、友達は翌日も仕事で朝が早い。遅起きの千葉ちゃんには関係のない話だが、また一緒に牡蠣を食べに行きたかったので、やむを得ず友達に従うことにした。
千葉ちゃん達は順番にマイクを回し合った。いや本当は奪い合った。なんせ四人で一時間半だ。短じか過ぎるではないか。

そのカラオケは時間との戦いと言っても過言ではなかった。そして楽しい一時間半はあっという間に過ぎ去り、千葉ちゃん達御一行様は、消化不良を感じつつも、当初の予定通り、延長をせずにカラオケを後にしたのだった。

地元の駅に着いた千葉ちゃんは家に帰りたくなかった。だって帰っても千葉ちゃんを待っている人なんていない。そして千葉ちゃんは大きな声を出したことでテンションがあがっていた。何より、歌い足りなかった。千葉ちゃんは歌いたかった。だったら、歌えばいいじゃないか!
ということで、初ひとりカラオケである。千葉ちゃんは地元のカラオケボックスの梅ルームに威勢よく乗りこんだ。

さてカラオケボックスの梅ルームでひとりの千葉ちゃんをお出迎えしたのは、カラオケマシンの容赦ない採点である。
千葉ちゃんが気持ちよく歌っていると、突然ノド自慢の落選の音が高らかに鳴り響き、強制終了させられてしまうのだ。そんなことが五曲以上続き、さすがに怒った千葉ちゃんは、カウンターにモノ申した。
「最後まで歌いたいだぁよ!」
カウンターのお兄さんはキョトンとしていたが、しばらくして千葉ちゃんの状況を理解すると、マシンをちょちょいといじり、通常モードにしてくれた。やっと最後まで歌える。千葉ちゃんはマイクを握り、さきほど強制終了させられた曲たちを力強く再入力した。

 

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